南アフリカ共和国 ~文章題が出来ない子どもたち~ #発展途上国#協力隊#
どうも~ 月曜日担当のカオルです
学校は今週からテスト週間に突入。子どもたちへの授業をしなくてもいいので暇です^^
と言いたいところですが、協力隊の別の仕事の関係で、現在他国に行ったり、南アの別の地域に行ったりしている最中です
今週は文章題に焦点を当てて、南アの子どもたちが苦手&できない原因の解明をしてみようと思います
①なぜ文章題が出来ないのか
「文章題 どうやったら出来るか」とググってみると、多くの記事が出てきます
これは日本の子どもでも文章題に苦戦する子が多いということ
良く挙げられている原因として、国語力の低さ(読解力の低さ)が取り上げられています
また、中学受験をさせるうえで文章題の問題が難しい! という様に感じている親御さんの記事が多いので、決して小学校の授業レベルの話ではないのでしょう
ちなみにPISA(OECD(経済協力開発機構)加盟国を中心に3年ごとに実施される15歳児の学習到達度調査)において、
日本は総合3位。算数では5位に入っています
以前にも南アの算数教育の問題点を指摘しました・・
kyouryokutaimath.hatenablog.com
ちなみに南アはメジャーな全世界共通の算数テストに国として参加していないので、どのくらいの順位に位置付けられているのかがわかりにくいです
以前南アの基礎教育省(文科省みたいなもの)の方で国際的な学力テストを導入しようという試みがあったのですが、1度やったのみで打ち切りになってしまいました
色々と原因はあったようなのですが(教師によるカンニングの奨励や、下位の子への体罰問題)、個人的には「自国のレベルが低いって世界に知れ渡ってほしくないからじゃない?」というのも1つの原因と思っています。それに現実問題、各地で不正が横行するのも相次いだそう
悪い部分は必死に隠そうとする ということですね
南アの算数教育記事とかをネットで調べてみても、GDPの伸びに関連付けられて、教育に関してもポテンシャルはある国として述べられていることも多いですが、白人排他主義の高まり・教育の改善の先が見えない点・政府高官の汚職 等々を見ていると、果たしてポテンシャルもあるのかどうか・・
羊の皮をかぶった狼ならぬ、羊の皮をかぶったヤギだった というオチがありえそう
まあポテンシャルは置いておいて、今回は実際の現状に即して、任地の子どもたちが文章題が出来ない自分なりの考えを述べたいと思います
文章題が出来ない理由
①英語力のなさ
英語で問題が書かれていることは大きな問題点です。つまり単語の意味が分かっていないと文章をイメージできない。そして英語ができない子が多い僕の任地では、この段階で躓いてしまう子どもも多いです。もはや問題を解く以前の問題ですね
②長い文章が読めない
この問題も大きくて、子どもが問題文を読むことをスキップしてしまうということです
つまり子どもが問題文程度の2~3行の英語が読めないのです。1行の問題文でも読まないなんてこともざらにあります
これは現地語で書かれている選択肢にも、問題に沿ってないことを答えてしまう子供は多くいるので、英語の能力云々以前の問題なのだと僕は思います
日本の子どもでも、問題文をきちんと読まないでスキップしてしまう子はいますが、こちらの子はその割合が8割ぐらい。問題文はきちんと読もうね^^
③読解力がない
前に述べたのと同じですが、結局文章題って、文章をきっちりイメージできているかが重要になってきます。必要な情報を選んで(情報の取捨選択)、自分なりに考えを整理する。この能力が弱いと僕は感じています
これは一概に言えないのですが、理解できているのか、ただアルファベットを読んでいるだけなのか、こちらが混乱することが多々あります
わかりやすく言えば、日本語で文章題を読んだら文章題の意味が理解できますよね。ですが難しい本を読むと、日本語の意味は分かっていても何が言いたいのか二度三度読まないと理解できない時、もしくは何度読んでも言いたいことがわからない時がありますよね。そんな状況
彼らは「理解する」教育ではなく、「読む」教育を受けているため、英語を読めても理解できていないことが多い もしくは 現地語を読めても理解していない なんてこともあるのです
ですがもちろん、現地語の方が読解力は「まし」です。なので「理解」することが大事な小学校段階で、英語を「読む」ことに力を入れるこの国の教育システムは、個人的によくないと思っています
多読しなければそもそも同じ英単語に触れる機会が少ない。ですが、そもそもある程度の英単語を知らなければいくら文章を読んだところで入ってこない。英語学習の基礎を固める時間は私立でもなければ1日1時間の授業のみ。それも先生が来ない日もあり、無い時もあります。私立のように1年生からすべて英語! という風にでもしなければ、かなり厳しいですよね・・
④式を立てられない
上の①、②、③をクリアして初めてここにたどり着けます。つまりイメージも出来ているけど、足し・引き・掛け・割算のうち、どれを使ったらいいかわからない。特に引き算・わり算の概念は難しいのだなと、こちらの子どもを見ていて思います
ですが実際に大事なのは、ただ数字を計算することだけではなく、どんな場合においてどの式を組み立てるか、難しい計算をどうやって状況に即して組み立てていけるかです。計算だけなら電卓さえあれば事足りますし、今の時代パソコンがやってくれます
なので現代では、ただ単純計算ができる基礎段階よりも、基礎は当たり前でそれを使ってどう問題を解決していくかという問題解決能力の方が求められています。しかし実際にはまず基礎段階で計算という大きな壁があり、文章問題の前に語学力という次の壁がある。途上国の子どもたちにとって乗り越えなければいけない壁はたくさんあるのです
6年生でこの前あったのが、
2と6の差は何?
と子どもに聞いたときに、「4」と子どもが答えました
どうして? と聞くと、「2+4=6」だからと
間違ってはいませんが、「差」を求める際は、6-2=4をするのが一般的ですよね(日本の学校では差=引き算と教えます)
1・2年生だったらまあいいのかもしれませんが、数が大きくなっていくにつれてこの考えは通用しません。なので「差(difference)」を求める時は引き算だよね ともう一度復習させましたが・・
だって24+〇=1910
とかなったら、答えられませんもんね。足し算だと
このように式を上手くたてられないんです。これは練習不足もありますが、それ以上にイメージ不足も大きいです。つまり読解力不足から来ています・・
逆算の問題をReverse Questions と言うのですが、テストにもよく出てきます
〇×5+14=119 といった感じで
〇×18=306
とかも九九を超越している段階なので、急に答えられない子が増えます
いつも〇×2=6 〇は、6÷2=3だよね
だから、〇×18=306も、306÷18=17 だよね?
とやるのですが、未だに小さい数に置き換えて考えることが出来ない子が多いのです・・
⑤単純に計算ができない
もうね。これはしゃあない(笑)
四則がひどいレベルだと、何をやらせても吸収できないし、伸びしろもありません。結局算数は難しくなればなるほど、基礎計算は初歩中の初歩ですから。また中学校に入ると多くの教科(化学、物理、社会、国語等々)で計算を使います。小学校レベルの計算を理解できていなければ、すべての科目で苦しむことになります・・
社会だって人口計算したりしますし、物理・化学なんて頻繁に計算をしますよね
なので途上国に派遣された際は、初めの半年以上はみっちりと基礎計算を身に付けさせるのがとても大事だと僕は思います。そのあとの授業のやりやすさ、子どもの伸びが格段に違います
実際に自分が教えている学年で、学年ごとに基礎計算に力を入れた学年と、ゆっくりでも計算できたらいいかな? という学年とで大きく出来が異なってきています
またこの小学校低学年の基礎計算の定着率の低さが問題の根底にあり、世界の先進国が途上国のこの問題に取り組もうとしているところですが、いまだに目立った成果が挙げられていません。これは現地語と第1外国語の共存の難しさ、教員の質の低さが改善を邪魔している原因の1つであると僕は思います
現地語でも数字を数え、英語でも数字を数え。どちらでも計算を練習する。正直無理でしょ・・
また教科書がひっ算の方法をサブ教材として紹介しているこの国のレベルはヤヴァイですよ。ほんとに(笑)
教科書のメインの大きな数の計算方法は、
543+467=500+40+3+400+60+7=900+100+10=1110
いや、こっちの方が難しくない??(このやり方をBreak Down と呼びます)
もっと位が増えたらどうするの? 引き算どうするの? というお話
話が飛んだので、文章題に戻して、
文章題が出来ない。という問題はあまりにも根深い問題です
つまり、言われたことはできるけど、頭を使って考えることはできない ということと同じですから・・
そんな人材を企業も欲しがるわけがないですよね
これは英語で算数を学ばなければいけない、しかし肝心の英語教育がきちんと行われていない国ではどこでも起きうる問題だと思います。PISAテストの算数の得点ランキングを見てみても、上位に表示されている国は母語で算数教育を行っていますよね?(香港、マカオ、シンガポールは英語教育なのかな? 地域の広さも、環境も大きく異なるので例外とします)
もし南アが算数の点数を伸ばしたければ、すべて現地語で授業を行う(英語の能力は後回し) 又は、 英語で1年生から授業をやり、現地語をサブ言語の位置づけに明確に置く 又は、現地語ですべての授業をやりつつも、英語の授業の質をめちゃくちゃ高めて現地語も英語も話せるスーパー人材を育てる(まあ無理でしょう。どちらも中途半端になってしまうのがオチ)
この3つしかないと思います
今の南アはどっちつかずの状態。現地語を捨てる気にもなれないし、英語1本でやるには人材も足らないし指導要領も十分ではない
しかし南アではコミュニケーションを取るためにも英語を話せることは必須なので、「英語で現地語を除くすべての授業を小学校1年生から行う」 これが現実的でしょう
その分、もちろん母語は廃れていくと思いますが。う~ん・・
しかし本当に豊かになりたければ、どちらかを取らなければいけないのかもしれません・・
Rainbow Nation ''South Africa''
こうなる日が来ることを願っています
それではまた来週♪