協力隊小学校 算数 現地の取り組み ~朝学習~ 100マスは時間の無駄!? 改善案も含めて #発展途上国#教育#協力隊
最近南アフリカ共和国の小学校教育の現状に憤りを感じている、
月曜日担当のカオルです
今回の内容は3本立て
①日ごろの鬱憤の愚痴
②100マス計算が非効率的な理由
③100マス計算の改善案
それでは行ってみよう♪
①日頃の鬱憤と愚痴
とまあ、なぜこんな出だしから始まるかというと、ここ(任地)にずっといるとやるせなさからウガー!!! となる日が2週間に1回くらいあるのです
特に土日に、次の週何をやろうか考えていると、あまりのやらなきゃいけないことの多さ(教科書の範囲)と、子どもの理解度・実際のレベルの差に愕然
どんな出来が良い学校だったら、この教科書通りに進められるのだろうという感じです
そもそも先生たちの質がとても低いし(自分の任地の田舎の学校は)、やる気も低い・・
でもこの環境で生まれたから、この教育しか受けられず育っていく子どもたち・・
(子どもたちは自分が恵まれてる・恵まれていないなんて知りませんが)
そして大半は授業についていけずに、学校の教育? 難しすぎて全然ついていけなかったなー
となり、男の子は遊びまわってろくに仕事をしなかったり(安い賃金で働く大人になっていき)、女の子は高校を卒業後に就職、または在学中に妊娠して子どもは放置の親になっていく・・
(黒人の広義の意味での失業率は40%、若年層の間では65%となっている統計もあります)
任地の子どものほとんどが行く、地元の公立中学校なんて、去年1年間で妊娠したのが理由で30人ドロップアウトしてますからね
生まれた環境が違うだけで、こうも違うんだなと・・
でも日本にいる若者は、いかに自分が教育機会に恵まれているのか知りませんよね・・
ここの子ども達も教育機会はしっかりあると思います(学校があるという面で)
でも勉強の大切さを教えてくれ、そしてたとえ少しぐらい進みが遅くても子どもを伸ばしてあげられる大人に恵まれることが難しい・・
そして貧困は子どもに受け継がれるという
でも南アの子は学校に行けるだけ、まだましなんですけどね!!
学校の質にかかわらず、初等学校への通学年数が1年増えるごとに、賃金は8%上昇するという調査もあるみたいです
※*1※
この本、新書で3000円とめちゃんこ高いのですが、とてもおすすめできる(発展途上国の現状とかに興味ある人)ので、興味のある方は是非。Kindleでも読めます
まあ3000円はちょっと高すぎだけれども・・><
そう考えれば、Gogogoの子どもも学校に通うだけ意味はあるのかもしれません
とまあ、前座はここらへんにして、話を本題へ
②100マス計算が非効率的な理由
今日のテーマはいよいよ授業編
私の任地のGogogo小学校では、Geade4・Grade5全員と、一部のGrade6に毎朝、朝学習を課しています(30分)
目的は、基礎計算力の向上 です
とにかく、下の学年(1.2.3)が全くと言っていいほど機能してないので(学校に来て、友達と遊んで、給食食べて帰る感じです)、4年生になっていよいよ私に習う子ども達
ちなみに4年生は英語は全くと言っていいほど話せませんし、聴けません
(5W1Hすら使えません。でも多くの子がトイレ行ってもいいですか? May I please go to toilet? は言えます 笑)
以前にも言ったかもしれませんが、子どもからしても4年生から学習がいきなり英語に切り替わるので、もうわけがわからなくなる というわけですね
日本の中一の壁(中学校になりいきなり学習内容が難しくなり、ついていけなくなること)の比ではありません
だって今まで現地語でやっていた授業がいきなり完全に英語に切り替わるんですよww
そりゃもうほとんどの子がここで落ちこぼれていきます
またそもそもの低学年時代(英語でFoundation Phase 基礎段階)での授業は全然機能してないので、本来現地語でマスターしてなくてはいけないこと(計算や現地語の書き取り)も、ひどい状態です
具体的には、
1桁の足し算は指を使わないとできない
1桁の引き算は指をうまく使えないのでほとんどの子が出来ません(断言)
引き算の概念がそもそもわかっていない子が多いです
繰上り・繰り下がりに関しては、繰り上がりは指を使えば何とか
繰り下がり?? それおしいの??
九九?? 1の段は言えるよ! 2の段は難しいな・・ あとは拙者存ぜぬ
わり算・・・ はなほじーーー 今日の給食何かな^^
分数 → 教員すら通分できないww
と上記のような感じになってます
ここに来た際に計算があまりにひどくて、テキストの内容を例え理解したとしても、計算を使う問題が全くできない!!
→計算が出来ないのでやり方を理解しても、答えを間違える
事に気づき、授業中だけでは遅れを取り戻せないため、朝学習を始めました
(協力隊員であればこの問題の根深さに絶望することでしょう・・)
最初任地に来て2か月ほど100マス計算をやっていたのですが、とある理由によりやめ、今は別の取り組みをしています
(取り組みについてはブログの後ほどでお話しします)
それでは なぜ100マスをお勧めしないか
について話したいと思います
まず初めに、100マスのデメリットについてお伝えしたいと思います
100マスをするデメリット
①解くのに時間がかかる
②丸付けに時間がかかる
③そもそもゆっくりでも全問解ける能力がなければ、いくら100マスやったところでタイムが早くならない
④1日に複数単元をチェック出来ない(1日に繰上りと繰り下がりや、掛け算と1桁の足し算等)。理由としては一度行うのに時間がとられ過ぎるから。
①解くのに時間がかかる
まず初めに、途上国に行ったときに、いきなり100マスをさせようとしてはいけません
彼らはそもそも100マス計算というものを知らず、早くやるコツ(左側の数字を覚えて、いちいち左の欄をチェックせずに解ける)も知りません
なので16マス。25マス位から始めましょう。
てかべつに、平方数じゃなくてもいいんだよ!
僕もこの失敗を最初の1週間でやらかし、軌道修正しました
また彼らの計算能力はひどいです
(4・5年生の1桁の足し算で日本の小1にも劣る子ような子もいます。日本の小3には勝てないでしょうね)
つまり解くのにものすごい時間がかかるんですね
100マス全部解き終わるのに、1桁の足し算・引き算でも初めは10分近くかかるでしょう
九九なんて夢のまた夢・・(解き終わるのに何分かかるんだろう・・)
また子どものレベルの差も大きいです。早い子は驚くような才能を持っているのですが、クラスの大半の子はそんな才能はありませんし、できない子の割合も日本より高く感じます(お金がなくて支援学級に行けない子も多いですし、そもそも数字に慣れ親しめたり、親のサポートがある日本とは全く別の環境で育った子どもです。出来ないのが当たり前の世界なのです)
②丸付けに時間がかかる
100マス計算は丸付けにも時間がかかります
私の学校では黒板に100マスを書き、そこに子どもに答えを書かせてみんなで確認という作業をしていましたが、あまりにも時間がかかり過ぎて断念
(答え合わせだけで平気で10分以上かかかります)
そこで私が答えを書いて印刷した紙を1人1枚配り、それを見ながら終わった人から答え合わせさせるという方法を取ったのですが、これも時間がとてもかかる
(100マスを解くのと同じくらいかかります。なぜならみんな解答を結構間違えるので、より時間が必要なんですよね。それに平気でうそ申告が横行するので、子どもの実力が把握しにくいです)
③そもそもゆっくりでも全問解ける能力がなければ、いくら100マスやったところでタイムが早くならない
これが一番大事なこと!!
100マス計算というのは、全問をある程度の時間内で解けて、なお且つほとんど全問正解する(ゆっくりやれば確実に解ける)子に向いている手法なんです
つまり正確な計算の土台がなければ機能しない
自分の任地の子ども達は計算の土台なんてものは存在しません
だから100マスをやっても制限時間内(それでも10分とってるんですよ)に終わらない子が大量に出ました
ずっと続けてたら早くなるかなと思いきや、
自分の得意な箇所だけやるので、苦手な箇所はずっと苦手なまま(特に九九。苦手段はスキップして、毎回終わりません)
ちなみに100マス計算のことを批難しているように感じるかもしれませんが、別に陰山先生(100マス計算を作った人)が嫌いなわけじゃありませんよ
むしろKindleで本も買って読んでますし、それに感銘されて任地で始めたというのもあります(ここ大事)
私自身、子どものころにたくさん100マスやりましたしね
ただ、途上国の現状には合わない。少なくとも協力隊員が入っているような場所で、初めから行うには(ここも大事) と言っているだけです
良く援助の例で、先進国の考え方・やり方が途上国で通用しない例が多く挙げられますが、100マスもその一つだと思います
そのまま取り入れては機能しません
④1日に複数単元をチェック出来ない
(1日に繰上りと繰り下がりや、掛け算と1桁の足し算等)。理由としては1度行うのに時間がとられ過ぎるから
プリントを配って、初めて、採点も終わるまでに20分ちょい取られます。これでチェックできるのは1単元のみ
ここの子は何度も言うように土台がないので、同じことを毎日やらなければ、最後にやってから時間がたったことはすぐに忘れてしまいます
今週繰上りやったら、次の週には繰り下がりを忘れてる
なので繰り下がりを次の週徹底的にやったら、その次の週には繰上りを忘れてる・・
こんないたちごっこが始まってしまいました
⑤総括
100マス計算は、ある程度能力があり、計算が得意な子どもたちにやらせる分にはとても効果的だと思います
自分も子どもの頃毎朝親に100マスをやらされたおかげで、子どものころから計算は速かったです
(数学は苦手です><。計算だけできてもしゃーない ってことですね笑)
ですが、あなたが行くであろう、そして教えるであろう子どもたちに、それほどレベルが高い子はなかなかいないと思います
きっと私の学校と同じように、基礎がなく、自分が1から面倒を見るような子ども達だと思います
そんな子に100マスは難しい・・ 少なくとも私は非効率的だと思います
まあトータルで見ても2か月ほどしかやってないので、もっと続けてみたらわかりませんが・・(私は例え続けたところで、やっぱり時間に見合った効果は薄いと思います)
なんでそんな 効率!効率! 言ってるの? と思うかもしれませんが、
4年生・5年生の子に1から教え込むのです。時間はいくらあっても足りません
それに協力隊の任期もたった2年です!!(実際には2年もありません)
それに隊員は口をそろえて言いますが、任地では教科書をやってほしい という要望が非常に強いです(シラバスに沿って進めてほしいという事)
でも九九が出来ない子に、分数の掛け算なんてわけわかりませんよね?
それでも教科書をやってくれと言われます(とりあえず子どもの点数が悪くても、自分の仕事はしたと言えるからだと思います。点数が取れない子は理解しなかったその子の責任だと)
クレイジーですよね。 ですがそれが当たり前なのが任地の現状です。
つまり時間はいくらあっても足りない。限られた時間でいかに効率的にやるかが非常に求められているんです
まあこれで終わると、お前結局100マスディスって終わっただけじゃないか 怒
となると思うので、ここからが本題です
100マスより効率的にできて、効果的な手法とは何か??
③100マス計算の改善案
私なりの答え、そして私がやっている取り組みを今回紹介させて頂けたらと思います
その名も
6色筋肉(英名:6 muscles )
と呼んでいます (笑)
ネーミングは、どなたかが教材で使っていたのをパクリました
(名前なんて何でもいいんです)
これは、1桁の足し算・引き算・繰り上がり・繰り下がり・掛け算・わり算の6種類の計算能力を同時に鍛えられることから来ています
さて私が6色筋肉と呼んでいる紙がこちら
このように表に1桁の足し算・引き算・繰り上がり、裏に繰り下がり・掛け算・わり算
の項目があります。
写真が横になってしまいすみません・・
何度かトライしたのですが、上手くいきませんでした
それぞれの項目にタイムと、いくつ間違えたかを記入する欄もあります
ちなみにエクセルで作りました
注目してみてほしいのは、パターンという項目
それぞれいくつパターンがあるのか書いてありますよね
そう、九九のパターン って以外にも36パターンしか覚えなくていいんです
1×数字 なんて、いちいちやる必要性ゼロなんです。だって簡単だもの。時間たっても忘れないもの
また、3×6と6×3、4×7と7×4 は一緒ですよね
こうやって同じものは1つだけ残して消していくと、覚えるべきパターンはたった36パターンになるというわけです
だから毎日毎日パターンを忘れないようにチェックさせる。そのためのプリントです
ちなみに4×7しかやってないと、7×4がすぐに出てこなくならない?
と思われる方ももちろんいると思いますが、結論から言うとすぐに出てくるようになります。要は訓練次第です。
ちなみにわり算のパターンも36パターンと書いてありますが、実際はもっとあります。紙のスペースの都合上、ランダムに選んで36パターンとしているだけです。
1桁の足し算・繰り上がりに関しては、1+2と2+1や、3+9と9+3のどちらも問題としてありますので、もっと効率的にやりたければ、1桁の足し算・繰り上がり共に、もっと問題を絞ってもいいと個人的には思っています
それではどうやってやっているかを、実際の様子の写真とともに説明したいと思います
まずは朝6時50分に全員着席させ(うちのクラスでは決まりです)、当日担当の班の子どもたち(うちのクラスではマネージャーと呼んでいます)が朝学習を行う準備を始めます(役割は、役割分担表を作りローテーションさせています)
全員に解答用紙(6 muscles)、答え、時間・ミス記録票の3点セットを配ります
うちのクラスでは、わり算から始めます。1単元ごとに何分以内で解答と採点を終わらすと決めてあります
(わり算→掛け算→繰り下がり→繰上り→1桁の引き算→1桁の足し算 の順でやっていきます。なぜ紙の裏から始めるかというと、1桁の足し算からやっていくと次第に集中力が切れていき、掛け算・わり算の難しい単元の際に頭が働くなっていくからです (笑))
マネージャーがタイムウォッチを手に取り、カウントダウンをしスタート!
みんな一斉に書き始めます
終わった子から手を挙げ、マネージャーがその子に対してタイムを伝えます
その子は記録票にタイムを記入した後、答えを見ながら解答をチェック
採点が終わったら、間違えた数をカウントした後、それも記録表に記入します
時間を決めているので、時間が来たら終了。次の単元に移行して、また同じように始めます
5・6年生では現在、
1桁の足し算・引き算・繰り上がり・繰り下がり→3分 掛け算・わり算→4分
でやらせてます。初めは、もう少し時間取っていましたよ。
丸付けもこの時間内に終わらせます。慣れてくればこのぐらいの時間内で、解き終わり&丸付けを終わらせることが可能です
これで必要時間は、計20分
もちろん子どもだけでやらせると、もう少しだらだらになるのですが(切り替えが遅い)、それでも30分朝学習用に取れば十分に終わります
最後にマネージャーたちが記録用紙と答えを回収し、元のように箱に戻して終わりです
毎週木曜日(ここ4週間くらい笑)にはテストを行って、丸付けも私が行い(もち子どもに手伝ってもらいます)、タイムが伸びた子、努力が見られる子、成績が輝かしい子(学校Top3)、全単元ノーミスの子には、ちょっとした報酬も用意しています
ちなみに子どもに丸付けをさせると、どうしてもチーティング(ずる)は起こってしまうので、私は基本的に記録票に書かれているミスの数は信用してません^^
その子の学力が知りたい時、ずるだと疑わしい時はその場で質問を投げかけてチェックします
(まあ先生なんて大体子どもがどのくらい出来るか知ってますから、嘘は見抜きやすいですよね)
まあずるできる環境だったらするでしょww(ちなみに日本の子ども以上にずるは横行してますよ。覚えていたら、理由はまた後日話したいなと思います)
でも3か月ほど続けると・・・
これだけ早くなってきます(これは私が採点した奴なので本物です笑)
使いまわしでごめんなさい (・。・;
これは5年生のできる子の紙ですが、6年生では学習障害の子・転校してきた子どもを除き全員が全単元2分以内に終わります。
これは去年、出来ない子でも必死に拾い上げた努力のたまものです。
非常にしんどかった・・・ もう2度とできません 笑
この6色筋肉を100マス計算で出てくるデメリットと比べていると、
①解くのに時間がかかる→問題数が少ないし、絞られてるのでそれほど時間がかからない
②丸付けに時間がかかる→問題数が少ないし、絞られてるのでそれほど時間がかからない
③そもそもゆっくりでも全問解ける能力がなければ、いくら100マスやったところでタイムが早くならない→重要な問題だが、未解決
④1日に複数単元をチェック出来ない(1日に繰上りと繰り下がりや、掛け算と1桁の足し算等)。理由としては一度行うのに時間がとられ過ぎるから。→1回でに全単元を復習できる
③の多少ゆっくりでも全問解ける能力がなければ、いくら100マスをやったところでタイムが速くならない 以外、問題は解決されました
しかし③をどうやって解決するかがとても大きな問題であり、協力隊員が頭を悩ませるところ
6色筋肉も結局、時間内に解き終わって、ほぼ正解であってくれなければ、いくらやってもタイムは伸びません(正直)
ではどうやって子どもにパターンを覚えさせるか・・・
その取り組み(フラッシュカード)は、また別の機会にお伝えしましょう♪
ーーーーーーー余談ーーーーーーー
土曜日担当のSaayaが、日本から持ってきて役立ったものを紹介されていたので、その返信として
日本から持ってきたものは折り紙だけで、分数の考え方 を教えるときに使用しました
(私ではなく、任地訪問してくれた他の隊員が教えるときに使っていました 笑)
子どもも楽しんでいたので、良かったのかなと
自分の授業では、特段教具 を用意することなく、黒板に絵等を書いて、子どもに説明しています・・(見るに堪えない絵です)
このあたり、教具の創造性が足りないのは自覚しています・・><
(教具を準備するめんどくささが、先行してしまう・・)
でも南アフリカ共和国も、日本と違ってマグネットが黒板に引っ付かないので、練りけしを持っていくアイディアはいいですね♪
今後派遣される人は絶対に持って行った方が役に立つと思います!!!!
*1:貧乏人の経済学 もういちど貧困問題を根っこから考える 参照